イーロン・マスクやリード・ホフマンらのアドバイスを収録した起業のマニュアル本「世界を変えろ! 急成長するスタートアップの秘訣」
本書はこれから新たに起業する人や既に起業している人に向けて、事業の選定に始まり組織マネジメント、採用戦略など、創業者であれば一度はつまずく悩み事にイーロン・マスクやリード・ホフマンら著名起業家がアドバイスを行うという画期的な取り組みを収録した書籍。
成功者たちの金言が詰まっており、明日からでも実践したい。
以下気になった点を箇条書き
スティーブ・ブランク/E.piphany創業者
・VCを活用しよう
伝統的なベンチャーキャピタリストは一度に8から12の企業の取締役会に参加する
そして引退するまでにこのサイクルを4回から6回繰り返す
つまりある企業が生まれてから終わりまでの全プロセスを40-50回も経験する
彼らはスタートアップが何通りもの方法で混乱に陥るのを見てきた
企業やスタートアップが失敗する方法なんて無限にあるわけではない
・率直に言って世界を変えるものにしか興味はない
社員全体をビジョンの方向に進ませることと、簡単だけれど世界を変えるようなものではない事業に手を出させないようにすることが私の役割だ
・VCへのプレゼンについて
ベンチャーキャピタルに対して新しいプロジェクトを提案する際には、まず「50年後に〇〇が実現されていないなどと思いますか?」という質問を投げかける
それに対して、「もちろん50年後には実現されているよ」という答えが返ってきたらしめたもの
そこで50年も待たずに2年で実現しませんか?と問いかける
・株式市場が自分をどう評価しているかなんて気にしてはいけない
ジェフ・ベゾスから幸せを株式市場に委ねてはならないということを学んだ
自分が今手がけていることに集中して、内面的な成功を追求する
金銭的な評価以上に何を実現するのかを気にすべき
ジェフ・バスギャング/Open Market、Upromise創業者、Flybridge Capital Partnersパートナー
・資金調達と資金使途
スライド25枚のパワーポイントだけで3,400万ドルのシリーズ資金調達に成功したが、大量の資金を得た事でまるでアルコール中毒患者のようになってしまった
お金がこんなにあるんだからいくらでも失敗できるぞという気分になった
・参加している取締役会でCEOによく確認すること
今から12ヶ月後にどのような会社になっていたいかを図で説明し、次に今あなたが行っているコミュニケーションや社員との関係構築、意思決定などのすべての業務を思い出して欲しい
先ほど描いた12ヶ月後の姿と比較して、もしその姿とかけ離れていると感じたら何かが間違っている
ロビン・チェイス/Zipcar創業者
・IT技術により余剰能力を共同消費して解決できるようになった
これまで「共有」によって余剰能力を利用しようとすると、高いコストが発生していた
余っている資源を見つけるのは難しく、見つけてもそれを移転するコストがかかった
しかし現在では一日24時間インターネットにアクセスできる
何かを小さな単位に分割してその単位ごとに売るということがはじめて可能になった
・初期のマーケティング
Zipcarを立ち上げたころ、MITと話をして彼らのメーリングリストを利用して3万5,000人の学生、教師、スタッフとコンタクトを取らせてもらえないかと頼んだ
彼らにとっては何のコストもかからないが、Zipcarにとっては大きな価値を生む行為
ジェフ・ダチス/Razorfish創業者
・新しいテクノロジーが一般化するには20年かかる
デジタルマーケティング市場の発展は2年もあれば充分だと思っていた
しかし当時起業の経験のある投資家たちは必ず新しいテクノロジーが一般化するまでには20年かかると言っており、その通りになった
クリス・ディクソン/Andreessen Horowitzパートナー
・ビジネスで将来何が起きるかを予測する最善の方法は過去に目を向けること
例えばFacebook広告が今後どうなるかを予想したければGoogleのアドワーズ広告の歴史を知るのが理にかなっている
・若い起業家の悩みに対して
若い起業家と会話していたときに「自分の会社がFacebookではなくMySpaceになってしまったらどうすればよいのか?」と聞かれたことがある
これはまったく馬鹿げた質問、マイスペースは6億ドルでexitしたから
・ファイナンスで失敗するスタートアップが多すぎる
必要な予算を低く見積もり過ぎてしまい、十分な資金を調達せずマイルストーンの半分で生き絶えてしまう
資金調達の各ラウンドでは「次の資金調達まで到達するのに十分な資金を得る」、もしくは「売り上げから利益を出せる体制を作る資金を得る」のいずれかを達成しなければならない
・最大値を結果にできる
資金調達は就職活動と同じで一つ一つの活動の平均値が結果として与えられるのでなく、最大値を結果にできる
事業開発パートナーやプログラマー、アドバイザーやメンターを探す場合も同じ
逆に言うと、毎日のように拒否されていなければ、それは自分のゴールが十分に野心的なものではないということ
カテリーナ・フェイク/Flickr創業者
・優秀なチームを持っていれば会社の方向を切り替えることができる
flickrやtwitterなどたまたま始めた副次的なプロジェクトが主力製品に成長するということがよく起こる
ミッチ・フリー/MFG.com創業者
・会社を構成する人々にはライフサイクルがある
売り上げが0から500万ドルまでの時期には起業家的で、根性があり現場に出ていくタイプのセールスマネージャーが必要
500万ドルから2,500万ドルの時期には組織に活力を与え、ルールを徹底させて一貫性を守るマネージャー的な人が必要
2,500万ドルから1億ドルの時期にはもっと分析能力のある人が必要
ジョー・グリーン/Causes創業者
・ファウンダーは採用フォーカス
創業者にとって最も難しいことの1つは、細部まで管理したいという誘惑に勝つこと
しかし最終的に創業者は会社を成長させる上で、最も効果の高い分野にフォーカスすべきで、それが採用
スコット・ハイファマン/Meetup創業者
・明確なビジョンを持つこと
かつてビル・ブラッドリーに取締役会に参加してもらっていたが、彼からあらゆる場所に首を突っ込みすぎだと批判されたことがある
「いいかい、君の仕事はパラダイスを描くことだ」と彼は言った
ビルが言いたかったのは、私たちが何度も成功繰り返したときに、世界がどうなるのかについて明確なビジョンを持たなければならないということ
リード・ホフマン/LinkedIn創業者
・起業の難しさについて
起業は崖から飛び降り、落ちながら飛行機を組み立てるようなもの
・栄養剤ではなく痛み止めを作る
これはベンチャーキャピタルの世界で古くから言われていること
しかし今でも才能豊かな人々が市場での競争力を持たないただの一機能や部分的なサービスを実現することに明け暮れている
大きな潜在市場を目の前にしているのなら、なすべき事は痛みを根本から取り除く痛み止めをつくることだ、栄養剤が痛みを取り除くことはない
・他人より10倍優れた存在になる
競合他社に打ち勝つことができる領域に会社全体で取り組み世界中の誰よりも10倍優れた存在になることで医者を差別化する
・LinkedInの成功要因
LinkedInがどのようにクリティカルマスの問題を解決し、そして今日まで生き残ったのか?その理由の一部は、新しいSNSに参加した時、人々は何に最も期待するだろうかという問題を分析したこと
彼らが訪ねる質問の1つが「他にだ誰がいるだろう?」である事は確かだった
そこでこの疑問をユーザーたちが解決できるようにしようと考え、ユーザーの友人がLinkedIn内にいるかどうか調べられるシンプルなメールアドレスのアップロード機能を実装、その狙いが当たり、成長率が大きくアップした
・製品を明確に定義する
事業規模拡大する唯一の方法は、将来の機会を狭めるような行動に賭けること
「これが私だ」と明確にしてしまうと消費者から「それなら興味ないね」という反応される可能性もある
しかしこうした明確化をしなければ、人々は本当に自分の製品を求めているのかどうか、知ることができない
ベン・ホロウィッツ/Andreessen Horowitzパートナー
・プロダクトフォーカス
私たちの世界では、会社を引っ張るのは製品
チョコレートミルクのように違いを見極めることができない製品の場合には、マーケティングや物流といった要素が成否分けることになるが、テクノロジー系企業の場合はそうはいかない
最初に考えなければならないのは顧客のために、何を改善するのか、彼らのどんな行動を変えようとしてるのかという点
次にその目標を達成する製品をどうやって作るのかを考える、常に中心にあるのは製品
・10倍良いものを作る
何かを多少改善したくらいでは成功することはできない
テクノロジー企業について言えば、2倍や3倍くらい優れていてもダメ
今市場にあるものより10倍は優れていない限り、人間は新しいものを受け入れようとしない
・採用面接で犯してしまいがちなミス
相手が得意でありながら、自分ではよく分かっていないテーマについて質問してしまうというもの
自分が知っていること、すなわち自分のビジネスに関することについて質問すべき
・最高のチームでも最悪の市場に打ち勝つことはできない
たとえ規模がいくら大きくても悪い状態にある市場に投資していては素晴らしいビジネスを作りだすことはできない
・ザッカーバーグについて
ザッカーバーグのリーダーシップで強力な部分の1つは、製品に関して大きな決断を下す勇気があるという点
彼には会社を売却しないと言う勇気、手っ取り早くマネタイズしない勇気がある
だから製品に対して大胆な変更を加えることができる
トニー・シェイ/Zappos CEO
・何をするにせよ情熱を傾けられるものを選ぼう
たとえ1セントも手にできなかったとしても10年続けられるものでなければならない
・むやみな昇進を行わないように
会社の立ち上げ当初から働いてくれた人々をむやみに昇進させてしまうと、会社の成長が妨げられる
最初に雇った10人が5年後から10年後に、全員副社長になっているなどという可能性はごくわずか
サイラス・マスミ/ZocDoc創業者
・初期のZocDocについて
ZocDocはマンハッタンにおいて歯科の予約を効率化するサービスからスタートし、その分野と地域を少しずつ拡大した
・優先度の高い問題を解決すべき
ベンチャーの世界ではCEOが抱える悩みの中で10番目に挙げられるような問題に対処する会社を興してはならない
Salesforceが良い例で、彼らはCEOが直面する最大の問題の1つに対処し、まれ見る急成長を記録した
3番目か4番目ぐらいに位置する問題に対処しているようでは、彼らのような成功を収める事は出来ない
・会社で最初の営業マンになろう
ZocDocの最初の50人の顧客は私自身が獲得した人々だった
雇用した営業マンでは顧客の獲得は不可能だった
イーロン・マスク/SpaceX、Tesla Motors創業者
・起業家の最も重要な仕事は、卓越した製品やサービスを生み出すのに集中すること
素晴らしい製品も持たずに、素晴らしい企業になろうとしている人々がいることにいつも驚かされる
もし起業家にアドバイスを求められたら、製品のそばを離れずに、それを可能な限り良いものにするように、がむしゃらに取り組みなさいと言う
・誰かを解雇したらその理由を残りの社員に伝えておくことが大切
でないと解雇が業績に基づくものではなく、適当に行われているという印象を与えてしまう
・出来る限りMBAを避けること
MBAでは会社の作り方など教えてくれない
ホサイン・ラーマン/Jawbone創業者
・自らの決定の裏側にあるロジックを説明すること
組織を拡大する際に鍵となるのはどうやって決断を下したのかを説明すること
チームがそれを理解すれば、彼ら自身が決断を下せるようになる
リスクもあるが、それによって起きる問題よりも、解決される問題のほうが多くなる
ジェイ・ウォーカー/Priceline創業者
・解決策はもてはやされるのに、問題定義は軽視される
今解決しようとしている問題について話してみて
その上でこの問題を解決するのは我々だといえるか
問題の解決からスタートするのでなく、問題の理解からスタートしよう
ウォーカーデジタルゲーミングでは、スロットマシンのビジネスに関して様々な発明を編み出した
スロットマシンの発明など、色やデザインを少し変えたぐらいじゃないのかと思うかもしれないが、それは間違い
なぜ人々はカジノに集まり、騒音と報酬を出すコンピュータ端末の前に座るのか
単純な問題ではないが、問題の全体像を理解できたなら様々な形でイノベーションを起こせる
・資金繰りについて
資金が底をついたらあなたおしまい、これだけは心に留めておくべき
他の理由で会社が立ちいかなくなることはない
他に何をしても構わないが、資金だけは失うことのないように
・採用の理由について
問題解決のために人を雇わないように
まず問題の解決策を編み出してから、それを実行するために人を雇おう
特に参考になると感じたものや、共感したもの、示唆に富んでいると感じたアドバイスを箇条書きで抜粋した。
それぞれの起業家やVCで言っていることが相反していたり、そもそも前提条件が違ったりするので全てを鵜呑みにするのも危険だが、それにしても面白すぎる。勉強になりました。
蛇足ですが、あまのじゃくなのでこの辺は勝手に警戒しながら読んだ
自分の成功体験に引っ張られてアドバイスしていないか
特定の状況下で起きる事象を一般化していないか
言っている人の成功度合いで自分が各アドバイスを重み付けしていないか
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アクティブ運用で勝ち続ける唯一の投資会社「驚異の資産運用会社 キャピタル」
1931年に創業し、現在150兆円ものAUMを誇るキャピタルグループを分析した本書。長期で勝ち続けている世界唯一と言っても過言ではない運用企業の成功の秘密が詰まっている。
投資の世界には再現性の感じられないエピソードが多く、事実多くの運用機関は大きな経済危機が起きる度にマーケットからの退場を余儀なくされている。再現性のある投資を行うには?長期で良いパフォーマンスをコンスタントに出すには?といった投資に携わる者であれば必ず直面する悩みにヒントを得たく購入。
驚くべきことに、本書ではアクティブ運用を徹底的にこき下ろし、市場インデックスをベンチマークとしたパッシブ運用の信奉者であるバートン・マルキールが前書きを書いており、キャピタルについては賞賛の言葉を並べている。
以下気になった点を箇条書き
・キャピタルの成功要因
長い時間とお金をかけて熟成させてきた人事政策
複数のファンドマネージャーがポートフォリオを担当するというユニークな制度
一貫した運用哲学と投資手法
・複数マネージャー制度
一つのファンドをいくつかに分け、それを複数のファンドマネージャーが担当
一般的な運用機関では資産の増大とともに運用成績が悪化する、この問題を解決するために編み出された
個々のファンドが増額すればそれに応じて随時ファンドマネージャが追加されていく
・マネージャー間取引
あるマネージャが株を売ろうとする場合、同じファンドを担当する別のマネージャに売り注文が伝達され、そこで買い手がつけば売買は内部的に処理される
・当初20年間の収支はほぼトントン
創業者ラブラスは設立後20年間、長期的に質の高い組織を作るため、赤字を個人的に負担しつづけた
・キャピタルのやり方には人手がかかる
資産の実質成長率とファンドマネージャー数の伸びはともに約7%
・旗艦ファンドのアメリカン・ファンドを売るセールスマンに最大限の手数料を払うことにしていた
8.75%の販売手数料のうち8%はセールスマンに還元
・アメリカン・ファンドの解約率は業界平均の半分以下
投資家が運用成果に満足し、長期間買い増し続けてくれることを重視する
・キャピタルは早期にファンドのバックオフィス業務専門のアメリカン・ファンド・サービスという会社を立ち上げる
キャピタルではサービスを信頼獲得のための投資と見ている
顧客にとってどれほどサービスが大切かを理解しない運用機関には、何年かに一度必ず起こる成績悪化の時期にそのツケが回ることになる
・とはいえ出資者とのコミュニケーションは負担
キャピタルの試算では、出資者に運用報告に一回行くたびに、その準備等にかかるコストによって年率0.25%パフォーマンスが悪くなる
・セコイアキャピタルのルーツはキャピタルグループ
キャピタルでは顧客資金を使ったベンチャーキャピタルへの進出は認められなかった
セコイアという名前の別会社を通じて自己資金で投資することになった
なんとか100万ドルが集まり投資を開始するが初期は難航した
初めての試みに暗雲が立ち込めたが3号案件のアドバンスト・マイクロ・デバイスがホームラン案件となる
その後ドン・バレンタインが投資の責任者となりさらに事業を拡張する
最終的にキャピタルとセコイアは別々の道を行くことになるが、初期の出資者はキャピタルの紹介経由
・この2-30年の間にアメリカでは上場株式取引に占める機関投資家の割合は10%から90%まで上がった
そして上位50社の機関投資家がニューヨーク株式市場の売買の50%を占める
・キャピタルは現在、エマージングマーケット投資でダントツのトップ
その受託資産額は2位以下の10社分の合計を上回る
・キャピタルではリサーチ部門が中核的役割を担う
ファンドマネージャーの判断材料に活用するだけでなく、複数マネージャーシステムの中にアナリスト勘定を設けている
・徹底したハイパフォーマンス路線
小規模な運用機関がパフォーマンスを上げ、規模を拡大すると、徐々に顧客に解約されない程度のパフォーマンスを維持し、リソースを受託資産の新規獲得に集中させるようになる
つまり付加価値の薄い量だけで稼ぐアセットギャザリングになってしまう
キャピタルではこういった考えを断固否定
・キャピタルの重要な意思決定のうち、少なくとも8割はノーというものだ
ブームに乗って投機的な意思決定をしなかったことが長期で勝っている秘訣の一つ
・個別銘柄のDDを重視する
キャピタルの投資戦略は経済予想から始めるいわゆるトップダウン方式ではなく、まず個別銘柄に注目するボトムアップ方式
・キャピタルのポートフォリオの売買回転率は、業界平均の3分の1程度と低い
この低い回転率が長期投資と組み合わさると、アナリストには時間の余裕が生じるため詳細な分析が可能になる、またファンドマネージャも質の高い判断が可能となる
・いち早く新興国への投資に着目
キャピタルにとってエマージングマーケット(新興国市場)の低PERは魅力であり、とりわけ急成長の世界的企業を割安な価格で買えるのは大きなメリットだった
・未上場でありながら社員に自社株の購入を推奨
退職に合わせて社員が保有する株式をキャピタル自身が買い取ることで、社員がキャピタルゲインを得る仕組みを設計
何十年も勝ち続けている会社なので、成功の要因を絞ることは難しいし、キャピタル自体が時代に応じて打った一手が偶然も含めて当たったという側面もあるとは思うが、それにしても複数マネージャーのシステムを最初に取り入れたという判断は素晴らしいと感じた。運用総額が大きくなれば、基本的には一社当たりの投資金額が上がるため投資先が限定され、アップサイドが減少してしまう。しかし、複数のマネージャーに予算を振り分けることで、小回りの効く投資が可能となる。また、投資社数も多くなるので、リスクの分散が可能になる。
もちろん、情報が分散するのでマネジメントは難しく、特に出資者への報告の難易度は高まる。出資者からすると同じファンドなので、当然マネージャーは投資先について詳細を把握している前提でコミュニケーションを取ってくる。つまり他のマネージャーの投資先についても詳細な情報を把握していなければならない。しかし、キャピタルでは機能を分担させ、職能別の部隊を自前で用意することによってこれを回避した。
運用マネージャーのポストはファンドが大きくなればなるほど増えるため、若手社員のモチベーションも維持されやすい。そして運用部隊以外のアナリスト部隊やバックオフィス部隊にもインセンティブと責任を与える設計にすることが、質の高い人材を長期に渡って雇用し続けられる秘訣でもあったのではないだろうか。運用資産の増加率と従業員の増加率が一致していることからも、優秀な人材を長期で雇用することがキャピタルの成功を支えているということがわかる。
複数マネージャーのシステムもそうだが、外部環境に左右されない社内制度やスキームを整備することで真正面から資産運用会社が直面する課題に向き合っているという印象を受けた。
そしてやはりセコイアの創業秘話にはグッときた。当時40歳のドンバレンタインはキャピタルの後押しを得ながらも、たった100万ドルしかファンドレイズできなかった。それが今や世界最高のVC、夢がある。
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ヴァージン・グループ成功の秘訣をリチャード・ブランソンが自ら語る「ライク・ア・ヴァージン」
航空会社や携帯キャリア、スポーツクラブなど様々な事業を多角的に展開するヴァージン・グループ代表のリチャード・ブランソンがヴァージンの哲学や歴史について語った作品。ヴァージン・グループは派手で皮肉っぽいマーケティングで一躍有名になったが、そういった取り組みに至った背景なども収録されている。
1970年の創業以来、様々な分野で、同時多発的に事業規模の急拡大を遂げている同社の成功の背景やリチャード・ブランソンの成功の背景を知りたいと思い購入。ヴァージンは、独立系レコード会社だった時代から突然航空会社を立ち上げたり、携帯電話事業に参入したり、アフリカでスポーツクラブの展開を開始したりと、戦略も外から見ている限りでは読み取りにくい。ヴァージンについて同じように感じている方がいれば本書を読めば、その辺りの疑問も解消されるだろう。
以下気になった点を箇条書き
・再チャンスを与える
ヴァージンレコードのメンバーの1人がレコードを盗み、中古レコード店に売りさばいていたことが発覚
だがメンバーを解雇せずもう一度チャンスを与えた、後にそのメンバーはヴァージンの稼ぎ頭となるアーティスト発掘し会社に大きく貢献した
・ブリティッシュエアラインズと同等の広告費は出せない、すべてをかけて馬鹿をやれ。世間に自分を売り込め。
人生最高のアドバイスは?と問われてブランソンはフレディーレイカー卿から言われたこの言葉だ、と回答
・ゲリラ広告の活用
ヴァージン・エアウェイズのマーケティングチームはその日のビックニュースに24時間以内に反応し気の利いた広告を打つというマーケティングをよくやった
・ヴァージンが下した最良の決断のいくつかは市場からの迅速な撤退
航空事業に参入するときには、航空機をリースするボーイングとの契約に、12ヶ月後に事業がうまくいっていなければ飛行機を返還できる権利を盛り込んだ
・社員の帰属意識を高める
従業員が「会社が」という言葉を連発するようならその会社は問題を抱えている。従業員に会社への帰属意識がなく、「我々」という表現を使わない場合、それは組織の上層部と現場の意思疎通が図られていないサインだ。
・ブランドはある製品やサービスに何を期待できるかを伝える手段
鍵となるのはvirgin experience、ありとあらゆる分野で顧客の期待に沿うエクスペリエンスを提供し続けることで、ヴァージンと名がついていれば品質は安心できる、と思ってもらう
何より大切なのはヴァージンというブランド
・ブランドイメージを思い通りにコントロールする唯一の方法
約束は控えめにして、実際にはそれ以上のサービスを提供する
広告ではすべてが最上級と言っておきながら、それ以下のサービスや製品を提供する事業があまりにも多い
できることだけを約束する
・ブランソンはヴァージン諸島のネッカー島に長期滞在することが多い
そこで業界全体を俯瞰し会社が将来向かうべき方向性を熟考している
他の経営者には会社がある程度の規模になってきたら自分のオフィスを本社からなくしてしまうことを勧めている、もしそれが不可能なのであれば雑務こなすことに忙殺されている可能性が高い
・ブランソンも創業メンバーの一人とは袂を分かっている
借金をしてメンバーの持分を買取り、いくつかの事業は譲渡した
すべての手続きが終わった後に、新たに買収したナイトクラブで盛大に離婚パーティーを開いた
・ヴァージンの成長戦略は過去「垂直分解」と揶揄された
新規事業はコアビジネスと無関係なものが多かった
普通の企業においてはそんな事業は突拍子も無いと一蹴されるような事業ばかり
しかし無関係の分野に参入し続けることで、新鮮で独自性の高い会社であり続けることができた
2000年から2003年までの間にヴァージンは3つも10億ドル企業を作った
ビジネススクールでは本業に特化せよというのが常識だ
ブランソンはこの戦略をABCD(Always be connecting dots)戦略と呼ぶ
一見関係ない事業が後に大きなシナジーを産む
・ブランソンが投資をするなら不況期だけ
好況期と比べて大抵の物が5割から9割安くなるからだ
・ヴァージンでは創業した600あまりの会社のうち相当数を閉鎖もしくは売却してきた
事業を立ち上げて成功したら持ち分を売却し、また新たな事業を立ち上げるための資金にする
・優れたカスタマーサービスはコストではなくマーケティングへの投資
カスタマーサービスは良い口コミを生み出すのに欠かせない要素であり口コミが最高の広告である
口コミは信憑性が高い上に無料だ
また、良いカスタマーサービスが顧客のリテンションを生み出す
既存の得意客を引き止めるほうが新しい顧客を開拓するよりずっと合理的
・過剰なサービスを行った社員にMVPを与えた
ヴァージン・アメリカでフライトの出発が遅れた時に、機内のドリンクワゴンを持ち出してゲートの顧客に配ったスタッフがいた
ブランソンはこの話を聞き、全社総会でこの社員にMVPを与えた
この社員にMVPを与えることで、他の従業員の行動基準もおそらく変わるはず、評価制度が社内の文化を作る
こういった象徴的な出来事を拾って表彰する辺りも徹底している
さすがブランソンといったところで、ヒントになる示唆に富んだ話が非常に多く収録されていた。特にプロモーションやカスタマーサポートの具体的な事例はスタートアップでもすぐに実践できる内容だった。
ヴァージンがここまで成長してきた理由については、単一の要因だけでは語りきれないが、その戦略の根幹は、
カスタマーサポートを厚くすることによって良い口コミを広げ、CPAを下げること
エクスペリエンスを向上させることでリテンションを高めること
にあるのでは、と思った。ここでいうカスタマーサポートは電話口のオペレーターだけでなく、顧客をサポートする行為すべてを指している。
実はヴァージンは、過去飲料や化粧品、衣料などの製造小売業にも参入したが後に競合に勝ち切れず撤退している。これはつまり、逆説的にカスタマーサポートによるエクスペリエンスの向上がうまく作用しない業界ではヴァージンのやり方は通用しないことを示しているのではないだろうか。
ヴァージンの手法は、サービス業における一つの完成された解なのかもしれない。
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ZARAの元マネージャーが語る、「世界中を虜にする企業 ZARAのマーケティング&ブランド戦略」
ZARAなどのブランドを展開するインティデックス社を中心に、グローバルに成功する企業のマーケティングやブランド戦略が描かれた作品。インティデックスは年間売上が3兆円に迫るとも言われており、1975 年の創業以来凄まじい成長を遂げている。
世界中を虜にする企業?ZARAのマーケティング&ブランド戦略?
- 作者: ヘスス・ベガ,溝口美千子、武田祐治
- 出版社/メーカー: アチーブメント出版
- 発売日: 2010/11/30
- メディア: 単行本
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インティデックス創業者のアマンシオ・オルテガはフォーブス長者番付の上位常連で、2016年にはなんと世界2位につけている。オルテガは極度にメディアとの接触を避けるので、インティデックスについてや自身についての著作は少なく、本書はそういった意味で貴重な一冊。
以下参考になった点を箇条書き
・ZARAの場合広告を打つのは年に2度、夏と冬のセールを告知する時のみ
それ以外は基本的に広告を利用することはない
・顧客のおかげで商売をしているのならば顧客が望むものを提供するべきだ、広告によって利益を受けるのは企業であって顧客ではない
ZARAでは広告費を商品の質を上げ価格を下げることに使う
・ZARAでは店舗が広告
必ず各都市の中心かつ大通りに店舗を構え、店内は販売スペースを犠牲にしてでもイメージを重視した設計に
確かに渋谷センター街のベルシュカ(インティデックスグループのブランド)を考えると立地も外装もすごいし、六本木ヒルズのZARAは最も人が往来する位置どりをしている
・インターネットバブルのさなかにネット販売をするつもりがないことを発表
今でもやはりモード系はネットでは売れないらしい
・富裕層だけのものだったデザイン性のある商品を、価格を下げることで多くの消費者の手の届くものにする
先日このブログでも扱ったIKEAのイングヴァル・カンプラードとオルテガは同じビジョンを持っていたことが見て取れる
・国によってローカライズしない
・オルテガは人前に一切出ない
上場する前は身分証の写真1枚だけが公開されるくらいで、ミステリアスな存在
未だに一度もインタビューに応じたことがないし、株主総会に出席したこともない
・ZARAの各店舗は在庫をほとんど必要としない
ZARAでは週に2回各店舗の商品配送を行うが、その際に確認したトレンドを取り入れた新商品の企画から販売をたった3週間で行う
・オルテガ「もしもオーナーが私の意見にもっと耳を傾けてくれていたらザラがファッションの世界で革命を起こすこともなかっただろう」
オルテガは13歳の時に2人の兄が働いていた洋品店で働きはじめた、最終的に店舗責任者まで出世するが自分が提案した戦略がオーナーに採用されなかったことに不満を持ち独立を決意
このような経緯からZARAは社員の意見を重視する
・Googleは大学でZARAはブティックでスターバックスは俳優養成所で人材を探すことがよくある
自分の会社がどこで人材を探すべきなのか、というヒント
・インティデックスではグループ内で競合関係を持つブランドを次々に設立
社内競争ではお互いの陣地を奪い合うことなく他社の陣地を奪い取ることができる
これはディスカウントストアのドンキホーテでも取られていた施策で、社内を2つのグループに分け、独立採算にして競争を促進した
インティデックスのみにフォーカスした本ではないので、オルテガについてやZARAの歴史については記述が薄かった。その辺りは別のソースから学びたい。
オルテガが一切メディアに出ず、顔写真すら出回らないようにしていた、という話はどこかで聞いたことがあるな、と思った。
所感としては、やはりIKEAとインティデックスは似ているということ。最高級ではないが、一定以上にクオリティの高いものをコストを極限まで削って提供している。仕入れやロジを最適化することはもちろんだが、IKEAはセルフサービスによって、ZARAはマーケティングをしないことによって更に踏み込んだコスト削減を行っている。
そして時代がそれを要請しているのではないかと思う。決して安い価格ではない、クオリティも最高級とは言えない。それでもクオリティ対しては安価な商品を、消費者のニーズを捉えて提供する、インティデックスのグローバルで最大公約数を取りに行く戦略。
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元CEOがIKEA大躍進の秘密を語る、「IKEAモデル なぜ世界に進出できたのか」
2016年にはグローバルでの売上が4兆円にも達したと報じられたIKEAだが、未上場を貫いているということもあり、これだけの成功を収めている理由はこれまで明かされてこなかった。そんなIKEAについて、2009年までCEOを務めたダルヴィッグ氏が自らの取り組みも交えながら解説を行った作品。
- 作者: アンダッシュ・ダルヴィッグ,志村未帆
- 出版社/メーカー: 集英社クリエイティブ
- 発売日: 2012/11/26
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IKEA創業者のイングヴァル・カンプラードは、2010年ごろまでフォーブス長者番付でトップ10の常連だったほどの資産家。(現在は息子に相続を行ったためランキングに顔を出すことはなくなった模様)
ZARAやH&Mなどと並んで、非IT企業でありながらここ10年で最も大きな成功を収めている企業ということは何となく知っていたが、その理由や創業者であるイングヴァル・カンプラードのパーソナリティまでは理解しておらず、気になっていたので購入。
以下参考になった点を箇条書き
・創業から30年後の1973年の店舗数は7店舗、売上は5,740万ドル程度
この記述からIKEAの大躍進には準備期間が必要だったことが分かる。当時の海外拠点はノルウェーとデンマークに1店舗ずつを構えるのみだったが、グローバル展開を始めると同時にIKEAの業績は急成長を遂げる。
・1956年にストックホルム郊外に出店を果たした新店舗が想定以上に繁盛してしまい、経営陣はやむを得ず倉庫を解放して買い物客が自ら商品を運び出せるようにした
このハプニングが現在の倉庫型のセルフサービス店舗の原型を形作った
・IKEAの最大の強みはデザイン性が高く機能的で質の良い商品を本当に安い価格で提供できること、IKEAは低価格に強いこだわりを持っている
本書を読む限り、IKEAが成功した最も大きな要因はここにあるように思う。価格よりも相対的に価値の高いものを、低価格で提供することで対象となる顧客数の最大化に成功したのではないだろうか
・全商品を他社の同等商品よりも最低20パーセントは安く提供することを目標とし、それ以上の値下げを行うことも珍しくない
1999年から2009年で平均価格を20パーセント引き下げることに成功したとのこと
価格を下げることに対しての意識は非常に強く、購入時のピックアップや組み立てをセルフサービスにしたのもこのため
・IKEAには、利幅に対して欲を出し過ぎない勇気があった
低価格戦略を取るために利益率を犠牲にしてきたが、長期的にはこの選択が利益を最大化した
・IKEAの親会社はインカ・ホールディングBVで、これをスティヒング・インカ・ファウンデーョンが所有し、さらにこれをインカ・ファウンデーョンが所有する
インカ・ホールディングBVが支払ってきた税金は長年25%ほどで、直近は20%前後まで下がっているとのこと
成長意欲の高い会社なので利益の再投資によって税金を圧縮している側面も大いにあると思うが、財団を通した節税スキームには批判も絶えない
・IKEAの店舗はフランチャイズ制を敷いており、フランチャイズ料として毎年店舗売上の3%を本体に上納している
これも節税対策で、この本では詳しく述べられていないがタックスヘイブンを利用したかなり巧妙なスキーム
この他にも、サプライチェーンの構築についての試行錯誤やロジの最適化、グローバルの出店戦略などにも触れられており、IKEAが非常に合理的な戦略を取っていることが良く分かった。
また節税スキームについて詳しくなっても仕方ないが、考え抜かれた設計になっていて興味深かった。
一番の学びは、IKEAクラスのモンスター企業を目指すにはそもそも対象となるマーケットを最大化することが必要になってくるという点で、IKEAのやり方であれば規模が出るまで我慢が必要。実際に創業30年時点では7店舗のみの展開に止まっていた。
単純に顧客の可処分所得を考慮して低価格戦略を取れば、対象となる顧客数は増える。その上で世界各国の経済成長なども手伝って、可処分所得の方も上昇を遂げ、更に潜在的な対象顧客数を増加させたのではないだろうか。
つまり、価格、クオリティ共に世界中の人々の最大公約数がIKEAになっていったのではないか。これはZARAやH&Mが躍進を遂げている理由と同じで、一定のクオリティを担保することは最低条件だが、価格設定という面に置いてグローバルの潮流を捉えているのではないか。という仮説を持った。
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デジタルガレージの歴史を紐解く一冊、「ファーストペンギンの会社」
価格コムや食べログ、ベリトランスなどの錚々たる企業をグループに持つデジタルガレージの創業から現在までを記録した一冊。創業20周年を記念して出版された本で、後半はデジガレ関係者による対談も収録されている。
ファーストペンギンの会社---デジタルガレージの20年とこれから | 株式会社デジタルガレージ 創業20周年記念プロジェクトチーム 編 |本 | 通販 | Amazon
日本のインターネット黎明期の実態が、収録されている伊藤穰一さんや林郁さんらの会話から伝わってきて、革命前夜の何ものにも形容しがたい独特の空気に触れることができた。
以下、参考になった点を箇条書き
デジタルガレージについて
・ヤフージャパン設立をジェリーヤンに提案していた
デジガレ経営陣が孫さんに「ヤフーの将来性を説明してほしい」と呼ばれプレゼンすると、それがきっかけでソフトバンクとの合弁が決まってしまった。その後ヤフーから日本法人の株を1%譲る、という申し入れがあったが、ジョーイと林氏はこれを突っぱねた。
・その後打倒ヤフージャパンを掲げインフォシークの日本展開を担当
・ジョーイはエバンウィリアムズのBlogger社に投資を行う予定だった
CGMに強い可能性を抱いていたジョーイはBloggerに投資を行うことを決断するが、直前でGoogleの買収が決まってしまった
・Twitterへの投資を実行
Bloggerへの出資オファーがきっかけでジョーイとTwitterの創業者でもあるエバンウィリアムズは旧知の仲だった、日本のアーリーアダプターの利用数も手伝って名だたる投資家から引く手数多だったTwitterへの投資が可能に
カカクコムについて
・2002年6月、カカクコムに7.6億円を出資、40%超の株式を取得
デジガレは2002年、カカクコムに17億円くらいのバリュエーションで7.6億出資。44%強取得。
— とっとこ未上場株太郎 (@doyagaovc) 2016年6月16日
一年半しない内に上場して初値382億。いま4,187億円。
・カカクコムの月間UUは4-5,000万人だが、投稿者は1万人程度
ユーザーに投稿させたコンテンツが4-5,000倍レバレッジ効いてるってすごい
食べログについて
・食べログは、月間UUが1,000万人を 超えるタイミングで初めてレストラン課金を開始した
最初の丸四年はカカクコムの利益を注ぎ込み、一切マネタイズを行わなかった。
その他
・Youtubeは2005年の創業当時、動画付きの出会い系サイトだった
その後動画版フリッカーのようなサイトにピボット、それもうまくいかずマイスペースに動画を投稿するサイトにピボットしたところ大成功した
・ライブドア事件によって投資家はどんなに優良なスタートアップに投資を行ってもすぐに減損処理を求められるようになった
DGインキュベーションも一時活動をストップした
やはり最も気になるのはカカクコムへの投資で、IRを遡ってみると、 2002年3月末時点での現預金が7.1億円しかなく、流動資産全体でも23億円しかない中での決断だったよう。今振り返ると素晴らしい一手でしたね。
常にファーストペンギンでありたいものだ。
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世界に600人しかいないビリオネア起業家の共通点を探る、「10億ドルを自力で稼いだ人は何を考え、どう行動し、誰と仕事をしているのか」
世界に600人しかいないと言われる、ビリオネア起業家の特徴を描いた作品。
相続や結婚で財を成したり、悪事を働いてビリオネアに上り詰めた人物は調査の対象から外しているので、純粋なファウンダー兼起業家の特徴だけが紹介されている。その基準に当てはめると世界にビリオネアはたった600人しか存在しないというのも驚き。
金銭的なリターンだけが全てではないが、この600人は起業家として「大」成功を納めたという事実は間違いないので、興味を持ち読むことにした。
以下、気になった点を箇条書き
・ビリオネアに外的な要因における共通点はない
育った環境や学歴、職歴などに偏りはないとのこと
・94%のビリオネアは大きな成功を収めるまでに複数事業を立ち上げている
いわゆるシリアルアントレプレナーだけでなく、ピボットや倒産したものも意外と多いらしい
・成功する「時期」は読めなかった
いつ成功するかは読めないが、必ずいつか成功するとは信じていた
またビリオネアは短気と気長を使い分けるのがうまいとの記述も
・失敗するリスクよりも、成功のチャンスを逃すリスクを恐れる
学術的にはプロスペクト理論の損失回避性と呼ぶらしい
他にもいくつかポイントはあったが、多少主張が先行してそのためのデータを集めたんじゃないかという節もあったのでw参考になった箇所だけ掲載。
自分も普段から比較的、成功する起業家に共通点は少ないという主張を繰り返しているんだけど、成功する時期についての話はかなり共感するものがあった。施策や時代背景と因果なく突然事業がブレイクすることだってあるんだから、長く成功を待ち続けられる方が強い。
共通点だけでなく、各創業者、各社の成功までの過程が簡潔に描かれており史実を学べるという意味でも勉強になった一冊。お馴染みジョブズやジェフベゾス、イーロンマスクあたりも登場するけど、IT以外の起業家についても記述があり、スティーブン・ロスがタイムワーナーにタイムワーナーセンター建設を持ちかけた話なんかも面白かった。
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