元CEOがIKEA大躍進の秘密を語る、「IKEAモデル なぜ世界に進出できたのか」
2016年にはグローバルでの売上が4兆円にも達したと報じられたIKEAだが、未上場を貫いているということもあり、これだけの成功を収めている理由はこれまで明かされてこなかった。そんなIKEAについて、2009年までCEOを務めたダルヴィッグ氏が自らの取り組みも交えながら解説を行った作品。
- 作者: アンダッシュ・ダルヴィッグ,志村未帆
- 出版社/メーカー: 集英社クリエイティブ
- 発売日: 2012/11/26
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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IKEA創業者のイングヴァル・カンプラードは、2010年ごろまでフォーブス長者番付でトップ10の常連だったほどの資産家。(現在は息子に相続を行ったためランキングに顔を出すことはなくなった模様)
ZARAやH&Mなどと並んで、非IT企業でありながらここ10年で最も大きな成功を収めている企業ということは何となく知っていたが、その理由や創業者であるイングヴァル・カンプラードのパーソナリティまでは理解しておらず、気になっていたので購入。
以下参考になった点を箇条書き
・創業から30年後の1973年の店舗数は7店舗、売上は5,740万ドル程度
この記述からIKEAの大躍進には準備期間が必要だったことが分かる。当時の海外拠点はノルウェーとデンマークに1店舗ずつを構えるのみだったが、グローバル展開を始めると同時にIKEAの業績は急成長を遂げる。
・1956年にストックホルム郊外に出店を果たした新店舗が想定以上に繁盛してしまい、経営陣はやむを得ず倉庫を解放して買い物客が自ら商品を運び出せるようにした
このハプニングが現在の倉庫型のセルフサービス店舗の原型を形作った
・IKEAの最大の強みはデザイン性が高く機能的で質の良い商品を本当に安い価格で提供できること、IKEAは低価格に強いこだわりを持っている
本書を読む限り、IKEAが成功した最も大きな要因はここにあるように思う。価格よりも相対的に価値の高いものを、低価格で提供することで対象となる顧客数の最大化に成功したのではないだろうか
・全商品を他社の同等商品よりも最低20パーセントは安く提供することを目標とし、それ以上の値下げを行うことも珍しくない
1999年から2009年で平均価格を20パーセント引き下げることに成功したとのこと
価格を下げることに対しての意識は非常に強く、購入時のピックアップや組み立てをセルフサービスにしたのもこのため
・IKEAには、利幅に対して欲を出し過ぎない勇気があった
低価格戦略を取るために利益率を犠牲にしてきたが、長期的にはこの選択が利益を最大化した
・IKEAの親会社はインカ・ホールディングBVで、これをスティヒング・インカ・ファウンデーョンが所有し、さらにこれをインカ・ファウンデーョンが所有する
インカ・ホールディングBVが支払ってきた税金は長年25%ほどで、直近は20%前後まで下がっているとのこと
成長意欲の高い会社なので利益の再投資によって税金を圧縮している側面も大いにあると思うが、財団を通した節税スキームには批判も絶えない
・IKEAの店舗はフランチャイズ制を敷いており、フランチャイズ料として毎年店舗売上の3%を本体に上納している
これも節税対策で、この本では詳しく述べられていないがタックスヘイブンを利用したかなり巧妙なスキーム
この他にも、サプライチェーンの構築についての試行錯誤やロジの最適化、グローバルの出店戦略などにも触れられており、IKEAが非常に合理的な戦略を取っていることが良く分かった。
また節税スキームについて詳しくなっても仕方ないが、考え抜かれた設計になっていて興味深かった。
一番の学びは、IKEAクラスのモンスター企業を目指すにはそもそも対象となるマーケットを最大化することが必要になってくるという点で、IKEAのやり方であれば規模が出るまで我慢が必要。実際に創業30年時点では7店舗のみの展開に止まっていた。
単純に顧客の可処分所得を考慮して低価格戦略を取れば、対象となる顧客数は増える。その上で世界各国の経済成長なども手伝って、可処分所得の方も上昇を遂げ、更に潜在的な対象顧客数を増加させたのではないだろうか。
つまり、価格、クオリティ共に世界中の人々の最大公約数がIKEAになっていったのではないか。これはZARAやH&Mが躍進を遂げている理由と同じで、一定のクオリティを担保することは最低条件だが、価格設定という面に置いてグローバルの潮流を捉えているのではないか。という仮説を持った。
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