イーロン・マスクやリード・ホフマンらのアドバイスを収録した起業のマニュアル本「世界を変えろ! 急成長するスタートアップの秘訣」
本書はこれから新たに起業する人や既に起業している人に向けて、事業の選定に始まり組織マネジメント、採用戦略など、創業者であれば一度はつまずく悩み事にイーロン・マスクやリード・ホフマンら著名起業家がアドバイスを行うという画期的な取り組みを収録した書籍。
成功者たちの金言が詰まっており、明日からでも実践したい。
以下気になった点を箇条書き
スティーブ・ブランク/E.piphany創業者
・VCを活用しよう
伝統的なベンチャーキャピタリストは一度に8から12の企業の取締役会に参加する
そして引退するまでにこのサイクルを4回から6回繰り返す
つまりある企業が生まれてから終わりまでの全プロセスを40-50回も経験する
彼らはスタートアップが何通りもの方法で混乱に陥るのを見てきた
企業やスタートアップが失敗する方法なんて無限にあるわけではない
・率直に言って世界を変えるものにしか興味はない
社員全体をビジョンの方向に進ませることと、簡単だけれど世界を変えるようなものではない事業に手を出させないようにすることが私の役割だ
・VCへのプレゼンについて
ベンチャーキャピタルに対して新しいプロジェクトを提案する際には、まず「50年後に〇〇が実現されていないなどと思いますか?」という質問を投げかける
それに対して、「もちろん50年後には実現されているよ」という答えが返ってきたらしめたもの
そこで50年も待たずに2年で実現しませんか?と問いかける
・株式市場が自分をどう評価しているかなんて気にしてはいけない
ジェフ・ベゾスから幸せを株式市場に委ねてはならないということを学んだ
自分が今手がけていることに集中して、内面的な成功を追求する
金銭的な評価以上に何を実現するのかを気にすべき
ジェフ・バスギャング/Open Market、Upromise創業者、Flybridge Capital Partnersパートナー
・資金調達と資金使途
スライド25枚のパワーポイントだけで3,400万ドルのシリーズ資金調達に成功したが、大量の資金を得た事でまるでアルコール中毒患者のようになってしまった
お金がこんなにあるんだからいくらでも失敗できるぞという気分になった
・参加している取締役会でCEOによく確認すること
今から12ヶ月後にどのような会社になっていたいかを図で説明し、次に今あなたが行っているコミュニケーションや社員との関係構築、意思決定などのすべての業務を思い出して欲しい
先ほど描いた12ヶ月後の姿と比較して、もしその姿とかけ離れていると感じたら何かが間違っている
ロビン・チェイス/Zipcar創業者
・IT技術により余剰能力を共同消費して解決できるようになった
これまで「共有」によって余剰能力を利用しようとすると、高いコストが発生していた
余っている資源を見つけるのは難しく、見つけてもそれを移転するコストがかかった
しかし現在では一日24時間インターネットにアクセスできる
何かを小さな単位に分割してその単位ごとに売るということがはじめて可能になった
・初期のマーケティング
Zipcarを立ち上げたころ、MITと話をして彼らのメーリングリストを利用して3万5,000人の学生、教師、スタッフとコンタクトを取らせてもらえないかと頼んだ
彼らにとっては何のコストもかからないが、Zipcarにとっては大きな価値を生む行為
ジェフ・ダチス/Razorfish創業者
・新しいテクノロジーが一般化するには20年かかる
デジタルマーケティング市場の発展は2年もあれば充分だと思っていた
しかし当時起業の経験のある投資家たちは必ず新しいテクノロジーが一般化するまでには20年かかると言っており、その通りになった
クリス・ディクソン/Andreessen Horowitzパートナー
・ビジネスで将来何が起きるかを予測する最善の方法は過去に目を向けること
例えばFacebook広告が今後どうなるかを予想したければGoogleのアドワーズ広告の歴史を知るのが理にかなっている
・若い起業家の悩みに対して
若い起業家と会話していたときに「自分の会社がFacebookではなくMySpaceになってしまったらどうすればよいのか?」と聞かれたことがある
これはまったく馬鹿げた質問、マイスペースは6億ドルでexitしたから
・ファイナンスで失敗するスタートアップが多すぎる
必要な予算を低く見積もり過ぎてしまい、十分な資金を調達せずマイルストーンの半分で生き絶えてしまう
資金調達の各ラウンドでは「次の資金調達まで到達するのに十分な資金を得る」、もしくは「売り上げから利益を出せる体制を作る資金を得る」のいずれかを達成しなければならない
・最大値を結果にできる
資金調達は就職活動と同じで一つ一つの活動の平均値が結果として与えられるのでなく、最大値を結果にできる
事業開発パートナーやプログラマー、アドバイザーやメンターを探す場合も同じ
逆に言うと、毎日のように拒否されていなければ、それは自分のゴールが十分に野心的なものではないということ
カテリーナ・フェイク/Flickr創業者
・優秀なチームを持っていれば会社の方向を切り替えることができる
flickrやtwitterなどたまたま始めた副次的なプロジェクトが主力製品に成長するということがよく起こる
ミッチ・フリー/MFG.com創業者
・会社を構成する人々にはライフサイクルがある
売り上げが0から500万ドルまでの時期には起業家的で、根性があり現場に出ていくタイプのセールスマネージャーが必要
500万ドルから2,500万ドルの時期には組織に活力を与え、ルールを徹底させて一貫性を守るマネージャー的な人が必要
2,500万ドルから1億ドルの時期にはもっと分析能力のある人が必要
ジョー・グリーン/Causes創業者
・ファウンダーは採用フォーカス
創業者にとって最も難しいことの1つは、細部まで管理したいという誘惑に勝つこと
しかし最終的に創業者は会社を成長させる上で、最も効果の高い分野にフォーカスすべきで、それが採用
スコット・ハイファマン/Meetup創業者
・明確なビジョンを持つこと
かつてビル・ブラッドリーに取締役会に参加してもらっていたが、彼からあらゆる場所に首を突っ込みすぎだと批判されたことがある
「いいかい、君の仕事はパラダイスを描くことだ」と彼は言った
ビルが言いたかったのは、私たちが何度も成功繰り返したときに、世界がどうなるのかについて明確なビジョンを持たなければならないということ
リード・ホフマン/LinkedIn創業者
・起業の難しさについて
起業は崖から飛び降り、落ちながら飛行機を組み立てるようなもの
・栄養剤ではなく痛み止めを作る
これはベンチャーキャピタルの世界で古くから言われていること
しかし今でも才能豊かな人々が市場での競争力を持たないただの一機能や部分的なサービスを実現することに明け暮れている
大きな潜在市場を目の前にしているのなら、なすべき事は痛みを根本から取り除く痛み止めをつくることだ、栄養剤が痛みを取り除くことはない
・他人より10倍優れた存在になる
競合他社に打ち勝つことができる領域に会社全体で取り組み世界中の誰よりも10倍優れた存在になることで医者を差別化する
・LinkedInの成功要因
LinkedInがどのようにクリティカルマスの問題を解決し、そして今日まで生き残ったのか?その理由の一部は、新しいSNSに参加した時、人々は何に最も期待するだろうかという問題を分析したこと
彼らが訪ねる質問の1つが「他にだ誰がいるだろう?」である事は確かだった
そこでこの疑問をユーザーたちが解決できるようにしようと考え、ユーザーの友人がLinkedIn内にいるかどうか調べられるシンプルなメールアドレスのアップロード機能を実装、その狙いが当たり、成長率が大きくアップした
・製品を明確に定義する
事業規模拡大する唯一の方法は、将来の機会を狭めるような行動に賭けること
「これが私だ」と明確にしてしまうと消費者から「それなら興味ないね」という反応される可能性もある
しかしこうした明確化をしなければ、人々は本当に自分の製品を求めているのかどうか、知ることができない
ベン・ホロウィッツ/Andreessen Horowitzパートナー
・プロダクトフォーカス
私たちの世界では、会社を引っ張るのは製品
チョコレートミルクのように違いを見極めることができない製品の場合には、マーケティングや物流といった要素が成否分けることになるが、テクノロジー系企業の場合はそうはいかない
最初に考えなければならないのは顧客のために、何を改善するのか、彼らのどんな行動を変えようとしてるのかという点
次にその目標を達成する製品をどうやって作るのかを考える、常に中心にあるのは製品
・10倍良いものを作る
何かを多少改善したくらいでは成功することはできない
テクノロジー企業について言えば、2倍や3倍くらい優れていてもダメ
今市場にあるものより10倍は優れていない限り、人間は新しいものを受け入れようとしない
・採用面接で犯してしまいがちなミス
相手が得意でありながら、自分ではよく分かっていないテーマについて質問してしまうというもの
自分が知っていること、すなわち自分のビジネスに関することについて質問すべき
・最高のチームでも最悪の市場に打ち勝つことはできない
たとえ規模がいくら大きくても悪い状態にある市場に投資していては素晴らしいビジネスを作りだすことはできない
・ザッカーバーグについて
ザッカーバーグのリーダーシップで強力な部分の1つは、製品に関して大きな決断を下す勇気があるという点
彼には会社を売却しないと言う勇気、手っ取り早くマネタイズしない勇気がある
だから製品に対して大胆な変更を加えることができる
トニー・シェイ/Zappos CEO
・何をするにせよ情熱を傾けられるものを選ぼう
たとえ1セントも手にできなかったとしても10年続けられるものでなければならない
・むやみな昇進を行わないように
会社の立ち上げ当初から働いてくれた人々をむやみに昇進させてしまうと、会社の成長が妨げられる
最初に雇った10人が5年後から10年後に、全員副社長になっているなどという可能性はごくわずか
サイラス・マスミ/ZocDoc創業者
・初期のZocDocについて
ZocDocはマンハッタンにおいて歯科の予約を効率化するサービスからスタートし、その分野と地域を少しずつ拡大した
・優先度の高い問題を解決すべき
ベンチャーの世界ではCEOが抱える悩みの中で10番目に挙げられるような問題に対処する会社を興してはならない
Salesforceが良い例で、彼らはCEOが直面する最大の問題の1つに対処し、まれ見る急成長を記録した
3番目か4番目ぐらいに位置する問題に対処しているようでは、彼らのような成功を収める事は出来ない
・会社で最初の営業マンになろう
ZocDocの最初の50人の顧客は私自身が獲得した人々だった
雇用した営業マンでは顧客の獲得は不可能だった
イーロン・マスク/SpaceX、Tesla Motors創業者
・起業家の最も重要な仕事は、卓越した製品やサービスを生み出すのに集中すること
素晴らしい製品も持たずに、素晴らしい企業になろうとしている人々がいることにいつも驚かされる
もし起業家にアドバイスを求められたら、製品のそばを離れずに、それを可能な限り良いものにするように、がむしゃらに取り組みなさいと言う
・誰かを解雇したらその理由を残りの社員に伝えておくことが大切
でないと解雇が業績に基づくものではなく、適当に行われているという印象を与えてしまう
・出来る限りMBAを避けること
MBAでは会社の作り方など教えてくれない
ホサイン・ラーマン/Jawbone創業者
・自らの決定の裏側にあるロジックを説明すること
組織を拡大する際に鍵となるのはどうやって決断を下したのかを説明すること
チームがそれを理解すれば、彼ら自身が決断を下せるようになる
リスクもあるが、それによって起きる問題よりも、解決される問題のほうが多くなる
ジェイ・ウォーカー/Priceline創業者
・解決策はもてはやされるのに、問題定義は軽視される
今解決しようとしている問題について話してみて
その上でこの問題を解決するのは我々だといえるか
問題の解決からスタートするのでなく、問題の理解からスタートしよう
ウォーカーデジタルゲーミングでは、スロットマシンのビジネスに関して様々な発明を編み出した
スロットマシンの発明など、色やデザインを少し変えたぐらいじゃないのかと思うかもしれないが、それは間違い
なぜ人々はカジノに集まり、騒音と報酬を出すコンピュータ端末の前に座るのか
単純な問題ではないが、問題の全体像を理解できたなら様々な形でイノベーションを起こせる
・資金繰りについて
資金が底をついたらあなたおしまい、これだけは心に留めておくべき
他の理由で会社が立ちいかなくなることはない
他に何をしても構わないが、資金だけは失うことのないように
・採用の理由について
問題解決のために人を雇わないように
まず問題の解決策を編み出してから、それを実行するために人を雇おう
特に参考になると感じたものや、共感したもの、示唆に富んでいると感じたアドバイスを箇条書きで抜粋した。
それぞれの起業家やVCで言っていることが相反していたり、そもそも前提条件が違ったりするので全てを鵜呑みにするのも危険だが、それにしても面白すぎる。勉強になりました。
蛇足ですが、あまのじゃくなのでこの辺は勝手に警戒しながら読んだ
自分の成功体験に引っ張られてアドバイスしていないか
特定の状況下で起きる事象を一般化していないか
言っている人の成功度合いで自分が各アドバイスを重み付けしていないか
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