ZARAの元マネージャーが語る、「世界中を虜にする企業 ZARAのマーケティング&ブランド戦略」
ZARAなどのブランドを展開するインティデックス社を中心に、グローバルに成功する企業のマーケティングやブランド戦略が描かれた作品。インティデックスは年間売上が3兆円に迫るとも言われており、1975 年の創業以来凄まじい成長を遂げている。
世界中を虜にする企業?ZARAのマーケティング&ブランド戦略?
- 作者: ヘスス・ベガ,溝口美千子、武田祐治
- 出版社/メーカー: アチーブメント出版
- 発売日: 2010/11/30
- メディア: 単行本
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インティデックス創業者のアマンシオ・オルテガはフォーブス長者番付の上位常連で、2016年にはなんと世界2位につけている。オルテガは極度にメディアとの接触を避けるので、インティデックスについてや自身についての著作は少なく、本書はそういった意味で貴重な一冊。
以下参考になった点を箇条書き
・ZARAの場合広告を打つのは年に2度、夏と冬のセールを告知する時のみ
それ以外は基本的に広告を利用することはない
・顧客のおかげで商売をしているのならば顧客が望むものを提供するべきだ、広告によって利益を受けるのは企業であって顧客ではない
ZARAでは広告費を商品の質を上げ価格を下げることに使う
・ZARAでは店舗が広告
必ず各都市の中心かつ大通りに店舗を構え、店内は販売スペースを犠牲にしてでもイメージを重視した設計に
確かに渋谷センター街のベルシュカ(インティデックスグループのブランド)を考えると立地も外装もすごいし、六本木ヒルズのZARAは最も人が往来する位置どりをしている
・インターネットバブルのさなかにネット販売をするつもりがないことを発表
今でもやはりモード系はネットでは売れないらしい
・富裕層だけのものだったデザイン性のある商品を、価格を下げることで多くの消費者の手の届くものにする
先日このブログでも扱ったIKEAのイングヴァル・カンプラードとオルテガは同じビジョンを持っていたことが見て取れる
・国によってローカライズしない
・オルテガは人前に一切出ない
上場する前は身分証の写真1枚だけが公開されるくらいで、ミステリアスな存在
未だに一度もインタビューに応じたことがないし、株主総会に出席したこともない
・ZARAの各店舗は在庫をほとんど必要としない
ZARAでは週に2回各店舗の商品配送を行うが、その際に確認したトレンドを取り入れた新商品の企画から販売をたった3週間で行う
・オルテガ「もしもオーナーが私の意見にもっと耳を傾けてくれていたらザラがファッションの世界で革命を起こすこともなかっただろう」
オルテガは13歳の時に2人の兄が働いていた洋品店で働きはじめた、最終的に店舗責任者まで出世するが自分が提案した戦略がオーナーに採用されなかったことに不満を持ち独立を決意
このような経緯からZARAは社員の意見を重視する
・Googleは大学でZARAはブティックでスターバックスは俳優養成所で人材を探すことがよくある
自分の会社がどこで人材を探すべきなのか、というヒント
・インティデックスではグループ内で競合関係を持つブランドを次々に設立
社内競争ではお互いの陣地を奪い合うことなく他社の陣地を奪い取ることができる
これはディスカウントストアのドンキホーテでも取られていた施策で、社内を2つのグループに分け、独立採算にして競争を促進した
インティデックスのみにフォーカスした本ではないので、オルテガについてやZARAの歴史については記述が薄かった。その辺りは別のソースから学びたい。
オルテガが一切メディアに出ず、顔写真すら出回らないようにしていた、という話はどこかで聞いたことがあるな、と思った。
所感としては、やはりIKEAとインティデックスは似ているということ。最高級ではないが、一定以上にクオリティの高いものをコストを極限まで削って提供している。仕入れやロジを最適化することはもちろんだが、IKEAはセルフサービスによって、ZARAはマーケティングをしないことによって更に踏み込んだコスト削減を行っている。
そして時代がそれを要請しているのではないかと思う。決して安い価格ではない、クオリティも最高級とは言えない。それでもクオリティ対しては安価な商品を、消費者のニーズを捉えて提供する、インティデックスのグローバルで最大公約数を取りに行く戦略。
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